◆ Campus ◆

基礎中医学講座を受けて


廣田漢方堂薬局鍼灸院勤務 鍼灸師・濱本寛子

昨年、命門会の基礎中医学講座を受講させていただき、早くも一年が経ちました。昨年は、基礎でしたが内容を聞いて、理解するのに必死で、知らないことも多々あり、学生の時に受講したかったと思ったものでした。今回、再び受講して再確認や新たな気持ちになり、大阪から参加して良かったと思います。命門会の基礎中医学講座は、鍼灸の歴史的背景から、東洋医学の基礎、弁証論治や臨床のお話し、実技と教科書にはない内容と充実していていました。

初日の基礎講座は、初学者はもちろんのこと熟練者にも十分に聞きごたえがあるものでした。田辺先生の病邪・八綱弁証は、邪実から始まり虚実寒熱と次々と展開して、中医学はこういう構造なのかと改めて認識しました。嶋先生の気血津液弁証は、漢字は表意文字であり、その漢字のひとつである気と言う字の成りたちからの話は、他では聞けない話でした。児玉先生と左近充先生は、臓腑弁証の講義でしたが、二つでひとつと思っていましたが、それぞれテーマがありました。児玉先生の脾肝腎は三焦が、左近充先生の心肝は神経精神疾患が、それぞれ伏線が引かれておりました。講義中の児玉先生の腰痛弁証論治は、昨今テレビではこんな治療方があると紹介されているが、漢方ではとっくに解決しているのに、もっと見直そうよ。と言う内容で、流行に流される人にとっては耳の痛いお話でした。左近充先生の五臓性格論を駆使した神経症へのアプローチと患者との接触の仕方は、私自身も同じような患者さんを抱えているので、「エッそんなやり方があるの。」と真剣に聞き入りました。

二日目は応用講座です。片倉先生を筆頭に命門会で作成された「内経知要」は「黄帝内経」のダイジェスト版で、鍼灸、湯液を学ぶ者にとって、古典中の古典。今回、読み流しをしていただき、難しいですが、古典を知ることは、治療していく大切な過程が記され、今まで学んだ線上のことが、古典を知ることで、立体的になり鍼灸と言うものがより理解できるのではと感じます。小山先生の今回初の食養生についても、鍼灸師として、食についても知っておく必要があり、五味という湯液に大切なことなど盛り沢山の内容でした。深沢先生の講義と実技を初めて受けさせていただき、スタート地点で「最近は勉強してない鍼灸師が多いね」と患者様からの痛いお言葉の話しを聞いて胸が痛み、女性の月経についての問診と実技では、いかに勉強し、感覚の修行をするか改めて考えさせられました。最後に学校、教科書では学べない新村先生のお話しは楽しく、東洋医学、鍼灸の素晴らしさをより感じる講義で、あっという間に終わる二日間でした!

最後の、レストラン、美味しかったです。よくテレビなどで紹介される所へ行っても、「こんなもんかな。」という感想でしたが、ここは違います。洗練された食材や火加減、包丁の入れ方が、明らかに違います。命門会のミャンマーでのNGO活動を応援してくださっている方からの、全額貸切りでのプレゼントです。「これをご馳走になったからには、明日からは勉学に勤しまなければ。」と思いました。

片倉先生、講師の方、ありがとうございました。今後もよろしくお願いします。

健康を届ける日本の鍼灸師


NPO法人 命門会

鍼はプラセボか 現場からの提言


命門会 会長 片倉武雄

代替医療のトリック TRICK OR TREATMENT(サイモン・シン&エツァート・エルンスト著 新潮社)には、鍼、ホメオパシー、カイロプラクティック、ハーブを題材にして論を展開している。その効果は全体としては、否定的もしくは有害としている。

第2章 鍼の真実では、鍼の起源、体系、過去の取り扱われ方、実験・調査の歴史などを紹介している。各研究者の実験結果、WHO報告では、おおむね鍼の効果に肯定的な結論が出ている。
WHOの報告に対して、≪科学的根拠に基づく医療≫として信頼を得ているコクラン共同計画によるレビューよると、過去の臨床試験を精査した結果、「鍼の有効性については確かなことは何もいえない。」としている。

著者はWHO報告を間違いとして、「以前から行われてきたずさんな臨床試験結果をとりあげたのと、中国の発表バイアスがかかったあまりにも良すぎる結果を考慮に入れたこと。」と論述している。
さらに一番進んだ最も質の高い科学的な方法として著者自身・エルンストのグループが行った試験と、信頼の足る試験としてドイツの多くの患者数を含む≪メガ・トライアル≫を紹介している。盲検法として患者を治療群と対照群とに分けて以下の試験を行った。

エルンストの試験

  1. 鍼治療群 経穴とされる箇所を決定(取穴という)して、一般的に鍼治療師が行っている1cm以上の深さで刺す。
  2. 対照群 偽鍼として伸縮式の鍼を考案使用し、多少の痛みを与えて刺さったかのように見せかける。という方法である。

ドイツの≪メガ・トライアル≫の試験

被験者群を三つに分け、1、何もしない群。2、経穴とされる箇所に鍼を打つ。3、偽鍼として浅く鍼を打つグループと経穴をわざと外して打つグループに分けた。

結果は両試験とも「本物の鍼と偽鍼のグループでは、ほとんど改善の差がない。」というものだ。その結果、筆者は「鍼灸はプラセボにすぎない可能性がきわめて高い。」という結論にいたっている。はたしてこの臨床試験方法が本当に正しいのか、検討してみる。

1、鍼治療師の熟練度と経穴の位置と深さの関係

@まず、経穴の位置であるが、各個人により、またはその時の状態に応じて、微妙に変化する。本来取穴は、熟練された治療者の手の感覚にたよるべきものである。日本では教科書的、解剖学的取穴は、あくまでも参考ていどの目安である。
それに対してこれらの試験では、多分に教科書的な取穴ではないだろうか。

A次に鍼を刺す深さである。どのくらい鍼を皮下に入れるのかは、あくまでも治療者の診断や手ごたえで決めるものである。取穴、鍼を皮膚に刺す技術、深く入れる操作、などは、熟練したものと未熟なものでは雲泥の差である。それを一様に1cm以上、以下などとするのは論外である。素人の鍼である。それでも効果は多少あるが、熟練した治療師のものより著しく低くなる。
とすると、鍼治療群は効果の劣る鍼治療で結果を得た、ということになる。

2、伸縮式鍼の実物は、まったく刺さないのか

本著で針治療を行っている写真を紹介しているが、中国鍼である。中国鍼は日本の鍼に比べ太く、皮膚に刺すときも日本の鍼を使用した場合よりも痛い。中国鍼を刺すときと同じような痛みを与えるとしたら、僅かでも皮膚に入る。 偽鍼の実物を見てみないと分からないが、少し痛みを与えるようだ。であるならば鍼が皮膚に入ることになる。臨床の現場にいるものならば誰でも経験することだが、鍼が少しでも皮膚に刺さればある程度の効果を得ることが出来る。感覚が敏感な患者には、あえてごく浅く刺す。これで十分に効果が出る。深く刺すと、症状が悪化することがあるからだ。もし感覚が敏感な被験者がいたとしたら、エルンストのいう偽鍼で高得点をマークしたことになる。 とすると、対照群はある程度効き目がある偽鍼で結果を得た、ということになる。

3、試験方法の詳細

結論に導く段では、メガ・トライアルとエルンストの試験の結果が混ぜ合わせてあり、 よく読まないとどちらの試験がどうなのか取り違えやすい。 また、コクラン・レビューやメガ・トライアルの報告は、かなり大がかりに行われたことが記載されているが、エルンストの試験では、その詳細が一切書かれていない。一般に行われている鍼の写真は掲載されているが、肝腎の伸縮式鍼は説明だけある。 この試験が本章の一番重要で、多くの紙面を割くところではないか。科学論文の命ともいえる、試験道具、総数N、評価基準、処理方法、有意差などをもっと整理して示すべきである。 とすると、エルンストの試験は本著の記載を見るかぎり、いささか情報が足りず結果を判断するのには不適である、ということになる。

4、発表バイアスの問題

コクラン・レビューでは、中国は発表バイアスがかかっているとして試験結果を除外したようだ。確かにバイアスがかかりやすい国ではあるが、欧米に比べ習熟度の高い鍼治療師が多く、高い得点が出るのも見逃してはいけない。いわば玉石混交の状態である。 エルンストはコクラン・レビューの影響を受けているのは間違いなく、「鍼の有効性については確かなことは何もいえない。」というバイアスがかかったままで試験を行った。これでは果たして公正なジャッジが出来るであろうか。

もし、熟練度の高い鍼治療師が治療群に針を刺した場合は、はっきりした結果が出るであろう。経穴の位置がずれたり、鍼を刺す深さが異なると効き目がかなり落ちる。
初学者でもたまたま治療の適切な鍼の深さ取穴にあたることがある。この場合は効果が出るが、それ以外ではかなり落ちる。いわば結果は治療家の腕が問題になってくる。治療群の効果が低い鍼、対照群の効く鍼の結果を比較すれば、その有意差は少なくなるのは当然である。

ふたつの試験はエルンストの言うほど「科学的に質の高い試験。」であったろうか。今まで述べたように、鍼治療師の熟練度を見落としている。
鍼治療師の熟練度、あまり効かない鍼の治療群、ある程度効く偽鍼の対照群、著者自身のバイアスなどが改良されないかぎり、いささか「科学的に質の低い試験。」と言わざるをえない。これでは正確なデータが得られるはずがない。不正確なデータでは、どのような高度な処理が行われたといえども、その結果は意味をなさないというのが統計学の常識である。

以上のことを踏まえて、エルンストの論に対して、三つの実例を挙げて問いかける。

1、小児疾患

乳幼児の夜啼き・疳の虫に、一般的には小児鍼という刺さない特殊な鍼で全身を撫でるが、私の場合にはまず「ちりけの灸」を行う。1歳以下の乳児ならばひとつか多くてふたつすえれば充分で、夜啼き疳の虫ならば1回でその効果が確認できる。

その「ちりけの灸」とは、小児の身柱(第三胸椎下にある経穴)に糸状灸(モグサを糸のように細くひねったもの)をすえる方法である。身柱は第三胸椎下に取るが、実際には頚を後ろに反らせて、胸椎の一番陥凹したところに取る。この場合一椎くらい上下することは、まれではない。そこがウイークポイントであるから、治療点として良いのである。その主治は、感冒・喘息・下痢・腹痛・夜泣き・夜尿・ひきつけ・蕁麻疹・発育不全・etcなど他方面にわたり、体の変調に広範囲に対応できる。だが、その効果を最も発揮するのが、小学校就学前後までで、それから徐々に低下していき、成人になるとせいぜい呼吸器系の病症に使うかどうか、といったところである。

身柱には、いろいろな方法をこころみた。温熱の点刺激がよく、直接灸が一番である。私の場合は鍼の尖を熱して浅く即刺即抜をすることがある。これは、軽く刺すか刺さない程度の浅い鍼である。

一歳以下の乳児の施術には、母親に抱かせて背中を出しせいぜい10秒くらいで終わってしまう。 乳児は、鍼や灸を見ることはなく痛みや熱さはほとんどない。

まず、第一の問いかけである。鍼を浅く打つ、かつ本来の経穴より一椎ずれたところに打つということは、エルンストの言う偽鍼である。それで効果が出ているのはなぜか。また、先入見のまったくない一歳以下の乳児に、プラセボということがあるであろうか。

2、ミャンマーでの鍼治療

ミャンマーで日本の鍼を教えることになったのは、2001年7月からである。パラメディカル・サイエンス大学の理学療法(PT)科教授のキンミョウラ女史は、筑波大学で医学博士号を取得した。その関係で日本の鍼灸指圧には強い関心があり、知人を介し私が代表を務める団体『命門会』に依頼があった。

初めのうちはPT科の学生に教えていた。それがさらに、同科やさらにヤンゴン中央病院でも鍼を教えることになった。患者も治療しながらの講義である。

とはいうものの当初は鍼に対してかなりの抵抗があった。ある要人の夫人の体調が思わしくなかったとき、いまだ未熟と思われる中医師が鍼治療を施したところ、余計に具合が悪くなったとのことで、鍼の評判はかなり悪かった。その様な偏見の中、鍼灸指導を続けていたところ、その効果に驚きうわさがうわさを呼び、医師、軍関係者、保健省役人、はてには保健省副大臣とその夫人まで患者として治療に訪れた。大いに鍼灸の面目躍如を果たしたものである。疑惑をもたれながら活動を続けられたのは、キンミョウラ教授の尽力といえる。その後今でも年に1、2度ミャンマーに行き指導を続けている。

さて、ここで第二の問いかけをする。鍼に対して逆のバイアスがかかった悪感情の中、それを覆したということである。これは果たして筆者の言うところのプラセボであろうか。

また要人夫人の例をみるように、未熟な者が鍼治療を行って症状が悪化したが、鍼治療がプラセボだとしたら改善するのではないだろうか。

3、トリカブト中毒

数年前、富山大学の漢方研究サークルと金沢大学の薬学部の院生が集まり、合同合宿をしたときのことである。テーマは附子(トリカブトの塊根)と黄耆の修治(加工)である。私はオブザーバーとして参加していた。突然附子を扱っていたグループが騒がしくなり、私が呼ばれた。学生の一人の左前腕部が真っ赤になり、かなりの熱感と痛みを覚えていた。トリカブトにかぶれたものと思われる。急いで、持ち合わせの鍼を特に症状の激しい経絡上の解毒や清熱作用が強い井穴(指先の爪の横にある経穴)に軽く刺したとたんに、鮮血が滴り落ちてきた。かなりの量でティッシュ5枚くらいは鮮血に染まった。学生に様子を聞くと「気持ちいい。」と答えて、みるみる赤みが取れてきた。症状が落ち着いてきたのでその日は右手を温めないように指示した。 翌日、左の患部を診ると母子球にポツンと何かに刺さった跡があり、そこだけ直径1センチくらい赤みが残っていた。トリカブトの枝がトゲ状になり学生の左手に刺さったようである。皮下のごく浅い部分に刺さったようである。これがもっと深かったら、とても鍼などで対応できるものではなく大変なことになっていた。改めてトリカブトの毒の恐ろしさを痛感した事件であった。

第三の質問である。トリカブトは、自然界においてフグ毒に次ぐ毒の強さである。軽いとは言え、トリカブト中毒にプラセボが効くであろうか。私は、とても効くとは思えない。また、鍼の効果がプラセボだけだとしたらどの経穴に刺しても効果があるはずである。鍼も僅かに刺した程度である。「これは瀉血療法の変法ではないか。」と問われるかもしれない。本著第一章では瀉血は無効であると断じているが、これにも異を唱えるものである。

本著付録―代替医療便覧 のなかで伝統中国学が取り扱われているが、著者自身の見識不足を強く感じる。 著者は執筆にあたり、テーマを意識して発表バイアスがかかっていとものと思える。本来ある臨床の姿から一部だけを切り取り、それも悪例だけを取りざたすやり方が、公平かつ科学的といえるであろうか。 最後に著者にお願いしたいことがある。鍼治療の技術レベルを≪科学的に質の高い方法≫で、熟練度の高い治療師よる試験を望む。

※本文は、『伝承と医学』の掲載原稿(片倉自身)を会報用に修正加筆したものある。

「話しのコツ」を聞いて


ハーブファーマシー 中村 美穂

 11月14日に行われた命門会総会後の講演で、神田外語大講師でキャナリー落語教室を主宰されている須藤達也先生の「話のコツ」を聞かせていただき、先生が編集してお持ちくださったDVDの映像なども見ながらお話くださったことについてつらつらと書き散らした感想である。
(1)現代日本落語の変遷について
 現代落語は現在四流派(落語芸術協会、落語協会、円楽党【現在の円楽一門会】、立川流)になっている経緯などを細かくお聞きした。何処の世界にも色々な考えを持つ人達がそれぞれの立場・考えで業界のことを思ってのことであっても、意見を擦り合わせしきれず分かれてしまうこともあるものなのだなぁ…と感慨深かった。
 その経過を聞くことでそれぞれの流派の特徴なども分かり、続いてお話いただいた話のコツについても分かりやすかった気がする。余談だが枕である(筈)のここが本題よりも長かったのは先生が師匠と仰いでいる談志師匠の影響だろうか!?
(2)その後先生がまとめられた話のコツについて
流派や個人のキャラクターなども違うのだから、当然のことと言えばそうなのだが、枕として人が言った台詞、ネタなどが話の世界に入りやすかったとしても自分がそのネタをそのまま使った時に果たして有効か?の先生のお話の部分は身につまされる。確かに私が師匠から聞いた話をそのまま患者に話した時、「??」のような顔をされ、得心が行ったように見受けられないことが今までも多々あったからだ。得たネタを消化して自分の言葉で語れるようになっていなければ聞いている相手には届かないものなのだと反省する。
また、見せていただいたDVDで名人達の話でもそうだし、よく言われることではあるが、
「大事なこと(単語)の前は一拍おく」
 これは講師をさせていただく機会があった時、講演前の私もよくよく師匠から指示されていたことではあったのだが、どうしても緊張して焦っていると(元々マシンガントークし易いものが更に)まくし立てる結果となり、どこが伝えたかったことなのか聴講してくださっている方々に分かっていただけない苦い経験も沢山している。
 自分の準備をきちんと納得がいくところまで仕上げて、その上で何処に話の緩急をつけるか?までシュミレーションをして初めて講演の準備が終わったと言うことなのだろう。それが出来ていないから焦るし、緊張する。分かってはいるが、私にはなかなかクリア出来ない課題山積の部分である。
(3)枕の型について
先生のお話では、枕に使うネタの型として、その後にする噺の種類・話し手個人のキャラクターにより以下の四つの型(テーマ型、うんちく型、業界型、時事ネタ型)がある、と説明された。
講演する場合に実際の講演内容に入っていく枕としては自分が入りやすい型で構わないと思うが、一対一で患者に接する場合は些か状況が違うように感じる。どちらかと言うと自分が話し易いことより、患者が理解しやすい型を選ぶべきだと言う気がする。自分が話し易い型でなくとも、先に書いたように自分の言葉として伝えられるところまで行っていないと伝わらないと言う意味ではハードルは高いが、薬局では「自宅で薬を飲み続けてもらう」と言う自己努力も症状改善に必要なファクターになるのだから、患者が理解し納得いった状態でお帰りいただくことは必須事項である。…とは言いつつ自分は毎日の相談の中でそれが出来ているか?
今回のお話を伺いながら日々の自分の相談・仕事内容に関して色々反省材料をダメ出しされ、気持ちを引き締めなければと言う気持ちにさせていただけた講演だった。

中央接骨師会での講演、肩凝りのタイプ別指圧療法


田辺義典

平成21年12月20日に日本青年館にて、協同組合中央接骨師会の下期学術講習会に講師として参加させていただきました。
タイトルは「肩こりの指圧療法」です。受講生は100名ほどの柔道整復師の方々でした。たくさんの臨床家を前にして指圧実技をいくつかのタイプに分けてお見せするということで、とても緊張しましたが、なんとか終えることができました。
その内容は、はじめに肩こりにたいして一般的に使うツボをご紹介して、その後肩こりの指圧法を「ストレスタイプ」「目の使い過ぎタイプ」「腕の使い過ぎタイプ」の三パターンに分けて実演するものでした。会場が広いために、テレビカメラをつかい、大きなスクリーンに手元を映し出して、みなさんにお見せするスタイルでした。ですから、スクリーンに自分の手技が映し出される画面を不思議な気持ちで見つめながら、説明をくわえていきました。講義終了後、受講生からいくつか質問が出たので、しっかり聴いてくださった方がいらしたことを知り、ひと安心しました。
いつもながら自分の臨床実技をことばで表現することの難しさ、もどかしさのようなものを感じつつ講義を終えることになりました。このような機会がなければ、なかなか自分の肩こりの治療を真剣にふりかえることができません。講演後のかえり道、見知らぬ街を夜風に吹かれながらふらふらと歩きながら、開放感をただただ満喫した次第です。

追記:後日、「タイプ分けの指圧治療」を実践した結果、患者さんにとても喜ばれたとおっしゃる受講生のひとりが、私の治療院に勉強兼治療に訪れてくれました。これを励みにますます、自分の治療というものを見つめなおし、それを表現する努力をしなければと思いました。

NGO,地方自治体、大学等における国際協力担当者のためのPCM研修


児玉康弘

 平成21年1月31日、2月1日の二日間、独立行政法人国際協力機構 広尾センター(JICA地球ひろば)にて、PCM研修を受けました。

 我々、NPO法人命門会は、ミャンマーの医療機関にて按摩指導、鍼の提供等を行っています。そういったボランティアを行う際、綿密な計画が必要となります。

 この活動は「草の根技術協力事業」として行っています。この草の根技術協両区事業とは、NGOや自治体、大学、公益法人等がこれまでに培ってきた経験や技術をいかして、企画・提案した事業をJICAが支援し、JICAと提案団体が共同で実施する事業です。

 今研修の「PCM」とは、この草の根技術協力事業を行う上の、計画立案・実施・評価を運営管理するのに有効な手法です。ルールは、参加者が自分の考えを自分でカードに書き入れます。それをボード(ホワイトボードなど)に貼っていきます。情報を共有し、視覚化しながら議論をすすめていきます。よって、参加性・論理性・一貫性などのメリットがあります。

 参加者は16名、様々な団体所属の方々で行われました。2グループに9分かれ、今回は「メコン国のパンサラ村への支援」をテーマに、実際に計画立案をしました。事業の規模は3年間、総額1000万円以内の設定です。その状況下で、どのような支援ができるかを立案します。私たちは農家の方々への支援を考えました。農家は稲作・家畜飼育・野菜栽培があり、それぞれが抱える問題は異なります。支援するには制約があるので、すべての農家を支援することは困難であると判断し、我々は稲作・野菜栽培の農家へターゲットをしぼり支援することにしました。このように、支援内容を具体的に調査しつつ進めていきます。
実際行った感想として、参加者全員が積極的に参加し、論理立てて理解し、矛盾のない計画立案をすることができ大変有用であると感じました。そして、初見の方々と熱くディスカッションし、楽しく学ぶことができました。

 私は海外支援(ミャンマーに向けて)で、まだ現地で活動したことがありません。NPO法人命門会の仕事として今回、初めて研修に参加しました。また、他のNGOの人ともあまり接触が無く、初めはかなり緊張しました。

 私以外の参加者はみな海外支援を積極的にされている方々で、各分野の専門家でした。そういった方々とディスカッションしました。海外支援における現場の状況が全く分からない私にとって、そのディスカッションの場は完全にアウェーでした。自分の持ちうるすべての知識、能力を搾り出し、必死にディスカッションに参加した私は、翌日知恵熱に苦しみました(笑)。しかし、現地の被受益者の方々だけではなく、現場を知らない私でも参加できるこの手法は、多くの意見を反映できるすぐれた手法であると感じました。

 今回の研修は、会社や団体などの組織運営などにおいても、充分に応用することができます。また、個人レベルでも意示決定に有用なものとなると思われます。我々命門会でも、何か企画立案があったときに、会員の人たちにも積極的に参加してもらい、実際に今回の手法を使って各自の意見を会の運営に反映させていきたいと思っています。

JICAでの研修は2日間だけの短い期間ではありましたが、内容はとても濃く、示唆に富んでいて、狭くなりがちな自分の世界、その中に安住しようとしていた自分に、強いカルチャーショックをあたえてくれるものとなりました。

特定非営利活動法人 アジア太平洋地域アディクション研究所

桶谷式乳房管理法研鑽会

国際協力NGOクワトロエスプラス

社会福祉法人救世軍社会事業団

財団法人ケア・インターナショナル ジャパン

社団法人シャンティ国際ボランティア会

静岡英和学院大学

社団法人青年海外協力協会

特定非営利活動法人ソルト・パヤタス

千葉県庁

学校法人明治大学

特定非営利活動法人難民を助ける会

社団法人日本環境教育フォーラム

富山大学での講義を終えて


命門会理事 深沢智子

 2008年11月23日、24日富山大学において経穴、経絡の講義を行った。
 今回講義の対象は、富山大学のしゃ赭べん鞭会の学生数十名である。
赭鞭とは、神農が持っていた赤い鞭のことである。
赭鞭会は医学生・薬学生を中心とした日本で一番大きな漢方サークルで、以前より命門会、東医学研究会と深いつながりを持っている会である。
 今回は、1日目は経絡、経穴について、私が講義し、2日目は、東医学研究会の陣内秀喜先生の素問霊枢の講義であった。

 講義をはじめる時はいつもそうであるが,最初の30分程が本当に大変なのだ。
聞く方も、話す方も緊張しているためどのように話を引っ張ればよいのかなかなか苦戦するところである。
ましてや、医学生、薬学生の前であるミャンマーの大学で何度か講義をした事はあるが、それとは全く別の緊張感を感じた。
 経穴について話をした後で、実際に取穴をしながら学生の中を何度か回った。
ツボの本を手にし、「このツボはどこですか。」と積極的に聞いてくる学生もいて、徐々に和やかな雰囲気になってきた。

 一人の学生から、「魚の骨を3月に喉に詰まらせた。」
という話が出た。今でも、違和感が残り病院でいくら検査をしてもわからないらしい。この時すでに、11月の下旬であったため。私だけでなく、皆驚いた。この学生に、太陰肺経の尺沢に刺針すると、骨が刺さっているだろうと思われるところにひびくと言う。
ちょうど肺経の流注に当たっているところだ。
残念ながら根本的な骨が取れない限りどうにもならないのだが、経絡というものに対してみんなが納得する話となった。

 次に、_中の説明をしたところで、私の臨床経験の中で、最近胸痛を訴える患者が多い例についての話をした。
胸に突き刺さるような激しい痛みを感じ、心疾患だと心配になり病院を訪れる人は意外に多い。さまざまな検査をしても異常が無く、不安ばかりがつのる。
このような例の時は、まず、心兪、膈兪、肝兪に刺針する。
たいがい患者はなぜ背部から治療するのか不思議がるのであるが、
心兪→寛胸止痛、寛胸降気
膈兪→寛胸理気
肝兪→疏肝舒筋
などの効能がある。私はいつも背部から上半身を広げるイメージを持ちながら治療していく。最後に、寛胸作用のある_中に刺針する。
仰向けに寝た時には既に胸の痛みは治まり治療前には寝るのもやっとだったのにスムーズに動くことが出来る場合が多い。
近年、パソコンの普及によって特に上半身の気滞によるこのような症状が多い事を話した。
 後日談になるが、受講した一人の学生から年賀状を頂いた。小学校の頃からの胸の発作的な痛みの原因がわかりとても驚いたと書いてあった。

 講義も終わりに近づくと、実際の治療を見たいという要望が多かったため、何人かの学生に針をうちその効果を見てもらった。
刺針するとおこる体のさまざまな変化に歓声が上がった。

 2日目は、東医学研究会会長である陣内先生の「黄帝内径素問」の講義となった。
私も、もちろん聞かせて頂いた。
そのレベルの高さ、説明の丁寧さは素晴らしかった。
漢方が専門でない彼らがどの位理解出来たのかはわからないが、陣内先生の講義後、勉強に向かう姿勢に変化が起きたと言うことだ。さすがである。

 講義の後は、学生の皆さんとワイワイ楽しくお酒を頂いた。その後、数名で美味しい日本海のしめ鯖をつまみに、ずらりと並んだ日本酒を頂いた。
日本海の魚の、新鮮さとおいしさは格別だった。

 私にとってこのような交流は、西洋医学を学ぶ学生にとって鍼灸がどのように映っているのか知る事が出来る良い機会でもある。
確かに、西洋医学でなければ出来ない治療は多い、しかし鍼灸・按摩でしかできない治療がどれほど多いかを痛感する。
治療家の実力が伴わないから結果が出せないだけなのである。
我々は、患者の体に直接触れ問診ではわからない情報を得、また、患者自身が気付かない症状さえも探す事の出来る希少な存在であるはずなのに、一番大切な指先を繊細に使える治療家がほとんどいないのが現状である。

 病院に行く患者が、一番に感じている不満は「医者が自分の体に触れて診察してくれない。データーばかり見ている。」である。
データーも重要な情報であることは確かである。しかし、西洋医学的な触診ばかりでなく「患者の目を見ない」「親身になって話を聞いてくれない」などの心の接触が無いのが、不満を生み不信感を招く原因となっている。
これは、忙しい医者には無理な注文でもあるが、学生達もこの話をした時には大いに納得し難しい問題である事は認識していた。

 二日間を通じての講義は、医学界の次世代を担う人たちに、鍼灸の効果の素晴らしさや漢方のおもしろさを知ってもらえる、貴重な経験となったと思う。
 命門会では、今後もこのような活動を増やし鍼灸・按摩という素晴らしい治療を広めていきたいと思っている。

 空港までのタクシーの中、立山連峰が目に入る。帰路の安堵感とともに、道端のところどころにある雪を眺めると、「富山に来たんだなー。」という感慨が湧き出してきた。


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